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ショートラブストーリー

第12章 瑛大(えいた)

心の中で意味のない言い訳をしている事に気付き、自分に苦笑する。

何をそんなに必死になってるんだか。

ふぅ…と息を吐き、コートとジャケットをハンガーにかける。

ネクタイを緩め、自分の頭をタオルで拭いていると、

「う…ん」

北方さんが声を洩らした。

気がついたか?

側によって顔を覗き込むと、うっすらと目を開いた。

「気分はどうだ?」

ぼんやりした表情で俺を見ている。

まだ目が覚めきってないのかな?

「何か飲むか?さっきの水か…何なら何か頼んでも…」

ルームサービスのメニュー表を持ってこようとして立ち上がると、ワイシャツの裾を引っ張られた。

「ん…?」

見れば北方さんが服を握りしめていた。

「…行かないで…」

「え?」

「行かないで…下さい」

絞り出すような、小さな声。

北方さんを見れば、涙目で…目の縁を朱く染めていた。

「北方さん…?」

「今日だけ…今だけでいいから…っ!!」

北方さんの瞳から、堪えきれずに涙が一粒溢れ落ちた。

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