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ショートラブストーリー

第5章 遥(はるか)

社内旅行 一日目。


待ち合わせの場所で、私は時間を確認しつつ浮かれていた。

今日から一泊二日で社内旅行だ。

温泉旅館で一泊…ってのも楽しみではあるけど、私はそれよりももっと楽しみにしてる事がある。

同じ部署の、池上慶太(いけがみけいた)くん。

私より2歳下の24歳。

明るくて、可愛い顔した皆の人気者。

彼も旅行に参加するって聞いて、迷わず参加に○印をつけた。

仕事じゃなく会えるのが楽しみで…バスが来るのが待ち遠しい。

「水沢さん、おはようございます!!」

驚いて振り向くと、池上くんが歩いてくる…何で!?

「お、おはよう…何でここにいるの?」

今回はほとんどの人が会社からバスに乗って、目的地方面に住んでる人は途中で乗せてもらうって集合方法で。

この辺りに住んでるの、私だけだから、当然私だけがここでバスを待ってたのに。

「あ~、昨日、友達の家で寝ちゃって。そこから一番近い乗り場を剣に聞いたらここだって言うんで…」

剣、って坂口くんの事かな。幹事だし。

「へぇ…よく準備できたね。服とか友達に借りたの?」

「え!?あー、あ、もう準備して車に積んだまま行ったんで…良かったです」

「そっか…じゃ旅行終わったら車取りに行かなきゃ、だね」

「そーですねー」

何だか池上くん、そわそわしてる。

あんまり触れてほしくない話題なのかな?友達って…もしかしたら、彼女、だったりして…?

「水沢さん、いつもと雰囲気違いますね」

「え!?あ、そう?」

実は気合い入れてコーディネートしたし、髪型もメイクもいつもよりキュート系にしてみたんだけど…

「何かいつもより優しい感じです」

「…それって暗に、いつもは恐いって言ってる!?」

「ちっ…違いますよ~!!…あ、バス来ました!」

安堵の表情を浮かべ、バスに合図を送る池上くんを見て、私は小さく溜め息をついた。


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