テキストサイズ

まとまらないお話たち

第6章 6


車内は至って静かだった。
隙あらば、何かしら話題をつけて話しかけてくる、昼休みになると駆け寄ってくる女生徒とは違った。
彼女が声を出したのは、話したのは自宅への道なりのみ。
彼女の道案内で、家まで車を走らせた。
家の人に事情を、と立ち上がった君村をハル子は「両親とも仕事で帰り遅いんで」と引き止めた。
他に兄弟がいないか、と思ったがそういえば一人娘だった気がする。
「鍵は持ってるんで大丈夫です。どうもありがとうございました」
無愛想に言って、ハル子は鞄を持つと車から降りた。
君村とは目も合わさず、会話も交わさず。
別にどう思われようがいい。
関係ない。
「!」
だが覚束ない足取りで歩く中で、急にふわりと体が浮いた。
「痛いんだろ。せめて玄関までは送らせろ」
「い、良いですよっ…」
寧ろ触らないでほしい。
この変態教師が!
暴れるつもりがそいつは長い足で歩き。
あっという間に玄関前まで着き。
ふいっと降ろされる。
あっさりと。
なんか気にしてた自分がバカみたい…。
「鍵は?」
その言葉に慌てて鞄から鍵を取り出し、穴に差し込み開ける。
「もう大丈夫だな」
「あっ…ありがとうございました」
振り向いて軽く頭なんか下げると、
「お大事に」
と言い君村は車に戻った。
「…………」
黙って、去りゆく車を見つめる。
抱き上げた力、すごく強かった…少し前までは大学生だったくせに。
車も若い男らしく香水の臭いがプンプンきついかと思ったら。
無臭に……。
「っ!」
必死に頭を振り、思考をきりかえる。
そして逃げるように家の中に入った。
黒い車は好かない。
夜の闇によく溶けそうだから。
溶けて……隠してしまいそう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ