まとまらないお話たち
第13章 13
とりあえずあの新入り…無駄に図体でかい上に大の男を片腕一つで持ち上げるってどれだけ怪力なんだ?
しかも楽しそうにやりやがる。
恋の方は苦しがっているというのに…!
クソッ、俺は何も出来ないのか?
死んでほしくない…まだ、まだ俺は…!
恋、お前と――。
「 」
声にもならない。
断末魔の叫びは部屋中に響き渡り…ブチブチと肉の裂ける音がした。
それからドサリ、と何か重たいものが落ちる音。
恐る恐る顔を上げると、
「……!!」
自分の足元に、丸い物体があった。
首から離れたそれは、大量の血液で成された赤海をボールのように転がり、俺の元へたどり着いたとでもいうのか。
切断面からは肉の間に骨が見える。
まだ、筋肉が痙攣をおこし、鮮血が迸る。
光の宿らぬ双眸が、ただただ悲しい。
嘔気を催す中で、しかしそれ以上に涙が流れた。
口に手をあて、嗚咽を抑える。
目をそむけてはいけない…最期を見逃した以上、ちゃんと見据えなければ。
結果的に縊死したのに変わりはないだろうが、これはあんまりだ。
憎々しげに新入りの方を見る――赤い水溜まりの中に佇んでいる。
自分も血を浴び全身血塗ろのソイツは、串に刺さったソーセージを持つように、うつ伏せに倒れている骸の端と端を掴み、持ち上げた。
そして舌舐めずりをしながら言った。
「…で、ヤッたあとはどーすんだ? コイツ…喰っていいのか?」
骸骨を乞う――『辞職を願い出る』という意味で、そんな言葉がある。
もともとは、主君に一身をささげて仕えた身だが、老いさらばえた骨だけは返していただきたい……という詞からきたらしい。
「ふ…ざけんな…」
せめて人間らしく死なせてやりたかった。
骸骨を乞うどころじゃない、骨の髄まであの怪物の良いようにされると?
本名だけじゃない、体まるごと亡きものにされると?
……冗談じゃない……。
「……大牙、待」
「社長が指示を出したとか、そんなことはどうでもいい。お前…これ以上、恋の体で遊ぶんじゃねえ」
隣にいた社長が蒼褪めた顔で俺の腕を掴んだ。
人の死に場に馴致しているはずの社長も珍しく動揺したということか?
畏怖したのか?
暴虐極まりないその男…他でもない、自分が迎え入れたんだろーが。
俺は睥睨しながら社長の腕を振り払い、落ちていた頭部を片手に持ち、銃を構えた。
「そこから離れろ」
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