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まとまらないお話たち

第14章 14

私より温度が高い指に絡ませ、きゅっと握るとビクンと大袈裟に隊員の手が動き、掌にじわりと汗が滲む。
尋常でない量に私の手も湿る。
「やっ…やめて下さい! 先輩!!」
途端に隊員が私の手を引き剥がしたが、距離が離れるその前に私は彼に抱きつく形で、その胸に顔を押し当てた。
「ひゃっ……」
女の子みたいな可愛い声が頭の上でする。
だけど厚い胸板の奥。
鼓膜を通して聴こえるリズムは、早鐘を刻んでいて。
隊員の体は変わっていた。
異性(女性)に触れられると異様なまでに反応してしまうらしい。
ちょっと肩が触れあっただけでも鳥肌が立つなんてデリケートなアレルギーだろう。
おかげで彼は女性嫌いで、チームの中の女性誰とも恋人はおろか友人関係でさえ築けていなかった。
パッと見はいい男なのに勿体ないと誰もが嘆く。
「だっ…だからアンタはムカつくんです! 自分で何をしてるかわかってるんですか!?」
私はそうは思わない。
こいつは性格がこの通り歪んでいるから、まずはそっちを直すべきだと思う。
「いいからあんたも腕回して。一生そんなんじゃ親御さんが可哀想でしょ! 女の一人や二人、抱き締められないでどうするの?」
だからこれは義務なんだ。
先輩として私が果たすべき任務。
私らなら間違っても互いを好きになることはないから、練習相手として見ろと言ってるのに。
仕掛けるのはいつも私だ。
「離せって言ってるだろーが……、ぐっ!」
私の肩を掴んで押し返していた強い力が、不意に消えた。
「え? ――――――わわっ」
顔を離して見上げると、隊員の瞼は閉じられていた。
うわぁ憎たらしいほどに睫毛長い、とかなんとか感心してる間に彼の体もろとも一緒に地面へ倒れこんでしまう。
…まさか失神した…!?
「あ~……もうっ」
圧し掛かってくる重たい体をやっとこさどかし、髪をかきあげて腕時計を見る。
今回は何秒。
15秒ぐらいか?
「(……まぁ前よりは長くなってきてる、か……)」
ふぅと吐息する。
このまま寝かしておいてもいいが、隊長に怒られるのはごめんだ。
「おーい、起きろぉ――」
黙って寝てればイケメンに見えなくもない。
目を覚ましたらまた悪たれるんだろうな。
むかつくのはこっちのセリフだっつーの。

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