まとまらないお話たち
第1章 1
「ってぇ! ちょ、おま。いきなり」
「何すんだ、じゃないッ!!」
叫んだら思わず瞳が濡れた。
大好きな彼氏の顔に平手打ち。
相手は完全に動揺している。
確かに突然だから無理もないケドさ。
でもね、理由もなしに叩く訳ないでしょ?
「………由香、オレ何かした?」
恐る恐ると言った感じで顔を覗き込んでくる悟を涙で瞳が濡れながらも精一杯睨んだ。
そうしたら、少しばかり彼は怖気づいたみたいだけど。
態と知らないフリをしているのか否か……。
とりあえず恍けるその態度、気に入らない。
今回ばかりは無性にイラつく。
悟はバカだから本当にわからなかったら可哀相だけど。
でもだからといって教えることはしない。
悟の方から気付くまで待つ。
「……」
どうやら本当に心当たりがないのか、頭を抱え始めた彼氏クン。
何だか情けなくなってきていよいよ別れようかな、とも考える。
記念日に別れるのはなんだか悲しい気もするけど。
でも元はと言えばコイツは気軽に女友達を沢山作るかのようないわゆる遊び人だった訳だし、何もアレは今日に始まったことじゃない。
現場を見たのがまだ一回なだけで本当は何度も色んな女の子と平気でキ…
「ゆ、由香。若しかしてこないだのアレ…」
…スをするような男なのかもしれない、悟は。
「不本意ながら見ちゃった。ゴメンね」
ニッコリと頷いた私。
途端に顔面蒼白になる悟。
「ちちちち、違う違う!! あれは誤解だ、誤解っ! 劇の練習で―――」
そういえば前にもこんなことあったな。
ある女の子と悟が抱き合うシーンをこれまた不本意ながら偶然にも見ちゃって。
それで問い詰めたら今みたいに悟は蒼白した顔で劇の練習だと言い張って。
…悟が演劇部に入っているのは事実だしそれにまぁ、ヒロインと主人公とのそーゆーシーンもあるだろうって考えて。
事実あの時は本当に『練習』だったのだけど。
練習でキスする訳ないでしょ。
それに台本書き役の誄サン曰く、キスシーンは書くつもりないって言ってたんだけどなぁ。
…ココは悟を信じるか、それとも友達の誄ちゃんを信じるか…まぁでも疑ってばかりいるのも不憫だからここは悟を信じてあげてもいいかな。
「第一誘ってきたのは向こうで! オレ全然その気なかったっていうか。…でも由香させてくれないし。紀本さんに言われたのもあるけどちょっとぐらい良いかなと思」
「…………は?」
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