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まとまらないお話たち

第6章 6


故意に見たんじゃなかった、ただ美術室に落ちていたスケッチブックを拾っただけ。
表紙の隅に書かれていたその名は確か風景描写が上手いと有名で、それでほんの興味心に中を開いてみたら最後のページ数枚にそれは描かれていた。
建物の影、男女が抱き合う姿…主人公はその2人だけなのか、その男女の絵が何枚も続いていた。
しかし単なる似た絵がずっと並んでいるのではなく、ページを捲るたびに細部から絵は変わっていた…二人の男女は動いていた、確実に。
けれど直接的には男女が何をしていたかなど描かれてはおらず。
良い所で建物が2人の影を隠している、とでもいうか。
『…ああ、それはどうも。ありがとうございます』
とにかく何を書いているのかは一応美術専門の君村は勿論、他者もわかる内容。
一体何を資料にしたのか、ポルノ雑誌でも写し絵したのか(…にしては、紙が厚かった)、そのリアルな描写はとてもじゃないが中学生が描くような内容ではなく。
しかも相手が、あの大人しそうなハル子であっただけに君村は驚いた。
その時はただただ驚愕して、何も言えなかったが。
まだ熱の冷めない昨日、大したデキだ、と廊下ですれ違いざま囁いた。
そしたら他に生徒がいるにも関わらず、彼女は真直ぐと自分を見据えそう言った。
机の上に突っ伏していた彼女を、授業態度が悪いと叱責目当てで指名したときに臆せず問題の答えを解いてみせた彼女のように。
まるで自分は少しも間違っていないとでも言いたげに。
小生意気な中学生だと思った。
何しろ普段から疑問に感じていたが、あの自分を見る目。
彼女は自分のことを教師だという目で一度たりとも見ていない。
新参だから? 他の奴よりも全然力のない奴だと思ってる?
「………ムカツク」
いや、それよりも一番腹が立ったのはあんな絵に過剰反応した下半身。
直接的にポルノ雑誌などで拝見するよりも、細部から、見えないところで展開されているその数枚の絵にはどこか身体が惹かれた。
<…彼は私を愛してくれると言った、だから私も返事を言わなきゃならない。示さなきゃならない>
一枚一枚、隅の方にあった直筆の言葉を思い出すたび。
<場所が少しアレだけど、すぐに終わると彼は言った。……一体何をするの?>
そりゃ…「愛し合う」男女がすることは一つしかないだろ、と突っ込みつつも。
熱を持ったこの体。

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