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まとまらないお話たち

第6章 6

あんなガキの描いた絵に反応するな、頭に甦る男女の絵を振り払いつつ。
2年A組に続くドアを開けた。
「起立」
自分が足を入れると同時に日直の声で生徒が立つ。
普通にしてれば目に入らない席。
特に関心を示すまでもないはずの、席。
一番前の、廊下側の席を見ると空席。
その隣は勿論のこと、他は全部埋まってる。
だがその机には教科書もノートも、何も用意してなくて。
他は皆優秀…いや、フツウ。
ハル子の机だけ、ただ一時間前の教科がそのままにしてあるだけ。
…ドコ行った、あの女。
「滝本は?」
尋ねる自分の声が心なしか低いのを、何人かの生徒は果たして気付いたのだろうか。
一瞬だけ自分を見る生徒の目が怯えたような…え、何。
今のそんなに低かった?
「あ、ハルちゃんは―――」
「すみません、遅れましたー」
気付いていた、の何人かに入っていたまりは恐る恐る声を出したが。
その理由を言おうとしたところで、当の本人登場。
「…理由は?」
「え、あー…、お手洗いです」
たたっと自分の席まで戻りながら言うと、立ったまま教科書とノートを入れ替え、椅子を引いて座った。
「…」
君村はそんな彼女を一瞥しただけで、すぐに教科書を開いた。

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