まとまらないお話たち
第6章 6
…早く、早く言わなければ。
直接顔が嫌そうな顔をしている訳ではないのだけれど、こんな日影も何もない中、ずっと立たされて彼女は不満そうだ。
少し先を見れば大木がある、……そこまで行って話そうか、いや、ここまできたらここで言うしかない。
態々移動して話すなんてバカらしい。
彼女も呆れて去ってしまうかもしれない。
立っていれば熱風にしか感じない風も、走る最中は汗のせいか冷たい風に感じた。
変に曇って風吹かずジメジメしている天気よりも、晴れてカラッとしている方が夏は好きだ。
しかし今は、感じる熱風も、蝉の鳴き声も時折耳につく蚊の羽音も、苛々するというより、彼の中の緊張を高める他なかった。
「……………えっと…、」
頬に汗が伝う。
〝好きです〟
入学式で君を見かけたあの日から、ずっと。
小柄で可愛らしかった彼女は、日を追うごとに背が伸び、体つきも女性らしくなってきた……何度プールの授業の、水着姿を盗み見しては、あの体を抱き締めたいと思ったことだろう。
まりのように、小柄な体さながら、強調しているところはしているという訳でもなく、顔も特別美人という訳ではない。
けれど彼女にはどこか、人を惹きつかせる魅力があった。
思ったよりも長かったスラリとした手足。
小ぶりな双方の丘の上で、ちょこんと顔を出す左右の尖り。
申し訳ないが、早い話が欲情してしまっていた―――。
どういえば良いのかわからない、この異様な感情。
けれどどうしようもなく欲しく感じたのは確かだった。
クラスの友人が裸体の女性が写る雑誌を見て興奮していたが、そんなものを見ても何も感じなかった、だがこの思いに気付いてからは、彼女を見かけるたびいつも体が熱を持った……やっと、やっと。
帰ろうと誘えたのが、一緒に帰れたのが今日だったが。
彼女は自分のことなど知らない訳だし、見知らぬ男から一緒に帰ろうと誘われたに加え、告白までされたら嫌だろうか。
いや、どのみちこの夏を越えたら自分はもう卒業する訳だし。
フラれたらそれで構わない、この変な感情も冷めるだろう。
だから……。
「…ずっと見てました、付き合って下さい」
玉砕覚悟。
深く一礼。
熱のせいかわからないが、上げる際頭がクラクラした。
彼女の反応を見ると思ったとおり驚いた顔をしている、…答えを待つ。
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