まとまらないお話たち
第6章 6
白い画用紙には一杯に、もくもくとした入道雲が描かれて。
でも、左上は青空。
真っ青な青空。
まるでこれから晴れてくる、みたいな。
それともこれから入道雲に最後の空が隠される、みたいな。
……どちらともとれる絵。
入道雲の中に右下だけは、あえて白い空間にして。
<お好きなように>
…そう、どちらでもいい。
「(よしっ、書けた)」
軽く画用紙に残るケシゴムの消しカスなどを手で払い、スケッチブックを机の上へ。
とりあえずソコにおいて筆箱の中に鉛筆、シャープペンをしまった。
「…へえ、今日は普通の絵か」
不意にそんな声がすぐ顔の隣でして。
見ると、君村が肩越しに長身の背を屈めてブックを覗き込んでいた。
「っ!」
整った顔立ちがすぐそこにあって、バクンと心臓が高鳴ったのも束の間。
「…『本業』はこっちなんで。変ですか?」
静まれ静まれと祈りつつ、ブックを閉じようと伸ばした手を引っ込め無造作にそこに広げたまま席を立つ。
「んー…」
悩ましげに声を出しながら、入れ違いで今までハル子が腰を下ろしていた椅子に君村は座ると、スケッチブックを手に取り数枚捲りながら答えを出した。
「まあまあ、…じゃねーの?」
許可した覚えもないのに、他の作品も見ながらぞんざいにそう言った男に、本当にこいつは美術教員の資格を持っているのかと疑いたくなったが、口には出さない。
席を立ったのは、セーラーの上着のポケットに入れた携帯がブルブルと震えたから。
そんなに交友関係は広くないし、それに田舎だし電話は家にあるソレ一本で良いのになぜだかわからないが親が買ってくれた携帯電話。
一旦美術室を出て、人気のないのを確認し二つ折りのそれを広げると、
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