
禁断兄妹
第61章 消せない傷
固く組み合わせた手を
じっと見つめながら
灰谷さんが話し始めたのは
小学生の頃の
話
「───自分は所謂ガキ大将でした。
昔から身体が飛び抜けて大きかった私は、力も強かったし態度もでかくて。
取り巻きを引き連れて、小学校のグラウンドや海だの川だの走り回っていました」
その当時
灰谷さんのおうちは
海の近くの街にあって
おじいさんの代から続く
洋菓子店を営んでいたという。
「二歳年下の優希は、本を読むのが好きなおとなしい子でした。
私と違って身体が小さくて、女の子に間違われるほど可愛い容姿をしていました」
真面目で
頭も良くて
心が優しくて
「将来は家を継ぎたいと言って、店の手伝いもよくしていました。
そんな子でしたから、両親や祖父母からとても可愛がられていて‥‥」
私と違って、という言葉を
何度も使いながら
灰谷さんは
優希さんを語る。
正反対なタイプの兄弟
本当に実の兄弟なのか
お前は拾われたんじゃないか
よくそう言われたと
苦笑する。
「優希は家にいるほうが好きでしたから、小学校の低学年くらいまでは私の外遊びについて来ましたけど、だんだんとついて来なくなりました。
でも家に帰れば、私達は仲のいい兄弟でした」
灰谷さんは
空を見上げた。
「私には私の世界があったし、優希には優希の世界があった。
外で二人で遊ぶことはありませんでしたが、家に帰れば優希は兄ちゃん兄ちゃんと私を慕ってくれて‥‥
子供部屋に二人でいる時の私達は、お互いの世界をうまく混ぜ合わせて、穏やかに過ごしていました」
