禁断兄妹
第61章 消せない傷
───あなたは、優希じゃない───
私を助けたい
守りたいと繰り返す
灰谷さん
その言葉の裏には
優希さんという人への想いが
あるの
「灰谷さん。優希さんって、誰なんですか。
聞かせて、もらえませんか‥‥?」
うずくまるような姿に
声を掛けた。
「‥‥弟です」
長い沈黙の後
小さな声が
聞こえた。
「弟さんがいらっしゃるんですね」
「‥‥いたんです‥‥」
過去形の返事が意味するものは
きっと
言葉に詰まる私に
灰谷さんは
顔をあげた。
「‥‥萌さん。本当に、話してもいいんですか?」
深い森のような
瞳
その奥にいるのは
兄と
弟
二人に
何があったんだろう
「聞きたいです」
灰谷さんは
出口を
探してる
私は目を合わせて
頷いた。