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禁断兄妹

第61章 消せない傷



エレベーターホールに着いた私達は

ボタンを押して
降りてくるのを待つ。



「萌さん自身は、心と身体が成熟するのは何歳だと思いますか?」



「‥‥わかりません‥‥わからないから、聞きたいなと思って‥‥」



「聡明なあなたなら、少なくとも小学生や中学一年生ではないと、わかりますよね」



頷けなくて
下を向いた。



「そもそも、何歳なんだろうとか考えるうちは、成熟していないってことだと思いますよ」

 

きっぱりとした声

顔をあげると
灰谷さんは厳しくも
暖かな表情で



「成長していくうちに、今ならと思える時が来ます。自分自身にとってもパートナーにとっても。
 答えを急がなくても、その時は自然にやって来ます」



「‥‥」



背中を包み込むように
そっと前へ押されて

扉が開いていたことに
気付く。


慌てて乗り込んで
振り返ると
灰谷さんがにこやかに手を振る。



「本当に気をつけて帰ってくださいね。今日は本当に、ありがとう」



「こちらこそありがとうございましたっ」



閉まった箱の中
息をついていると
後ろのほうから



「なあ今のHIROじゃないか?」



「だよな?!超カッコ良かったな!」



そんな声が
聞こえた。


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