禁断兄妹
第62章 夢のチカラ・夢のカケラ
「柊兄!」
リハーサル中の俺に
駆け寄ってきた和虎
今日のイベントは
モデル仲間が多く出演していて
和虎はモデル兼DJとして参加すると聞いていた。
辺りのスタッフに
ちょっと急用だと笑顔で挨拶しながら
和虎は俺を袖へと引っ張り
耳元に顔を寄せる。
「由奈から何か連絡、ない?」
すっと硬くなった
表情と声
「‥‥ないけど」
由奈のマンションを訪れて
別れ話をしたのは
つい
昨日のこと
そのことを手短に話すと
「じゃあ、そのすぐ後にマンションを出たのかな‥‥」
眉根を寄せた和虎が
息を吐く。
「由奈がどうかしたのか」
「‥‥あの娘、週刊誌の記事が原因で事務所から契約切られて‥‥今連絡つかないの」
俺を見る和虎の強張った表情が
泣き出しそうに
歪んだ。
「え?」
「マンションももぬけの殻らしいし、携帯の電源も入ってなくて。心配で」
契約を切られた?
もぬけの殻?
「どういうことだよ」
由奈がいる事務所は
以前
俺と和虎もいた事務所
そのオーナーから
由奈に契約解除の話をした後連絡がつかなくなり
マンションを確認したら
引き払った後だったと
和虎に相談の電話があったらしい
「柊兄にも電話したけど出ないからって言ってたよ」
仕事中の俺は
携帯をバッグの中に入れて
終わるまで見ることはない
「今日発売の週刊誌、見た?」
呆然と首を振りながら
───話って‥‥明日発売される週刊誌に関係すること‥‥?
ううん、ごめん、なんでもない───
昨日の由奈の言葉が
胸に浮かんだ。
「柊兄のアパートに出入りする由奈が撮られて、記事になってるの」
「まさかそんな記事で契約が切られるなんて───」
「問題になってるのは柊兄との関係じゃなくて、あの娘の実家が暴力団だったことなの」
「‥‥暴力団‥‥?」
「父親が組長で祖父は海川会の大物幹部。それが派手にクローズアップされて、ひどい記事になってる」
由奈は組長の養女であること
実の父親は祖父だと噂されていることも
暴露されているという
にわかには信じがたい話に
言葉を
失う
「あの娘まずいよ‥‥もう再起不能かも知れない」
和虎の声が
震えた。