テキストサイズ

禁断兄妹

第62章 夢のチカラ・夢のカケラ



ごめんまた後で話そう、と
和虎が立ち去ったステージの上

熱くなった身体と
冷えた頭

胸の中

心臓が暴れてる。


───日本でトップ獲りたいって言ってたよな。お前なら獲れる。あと少しだ‥‥頑張れよ───


俺は
なんて残酷なことを
言ってしまったのか

頷くこともなく
ただ微笑んでいた由奈

あの時にはもう
オーナーから契約解除の電話があって

記事の内容も
知っていたはず


───ダメなとこ教えて。いいところも教えて───


自分が載っている雑誌のページを広げては
俺に意見を求めた由奈

メモを取ったり
時には言い返してきたり

うんざりするほどしつこくて
バカがつくほど
真面目で

でも
その情熱はいつも

俺の刺激になっていたんだ


「一ノ瀬君、出て!」


「あ、はい!すみませんっ」


足が止まっていた俺は
慌ててライトの中へ
歩きだす。


───さよなら柊君‥‥───


最後の
穏やかな笑顔

微かに聞こえた
断末魔のような
泣き声

記事の真偽はわからない
でも
少なくとも

俺なんかと関わらなければ
今もお前は

ここに立っていられたんじゃないか‥‥?



かりん


ぱりん



一歩ランウェイを歩くごとに

靴の下で
音が聞こえる


由奈

お前の夢が砕けて

散らばったカケラが
音を立てている


胸が

潰れそうだ


ストーリーメニュー

TOPTOPへ