禁断兄妹
第62章 夢のチカラ・夢のカケラ
「家だって危ないのに、何しに行くんだよっ」
「マンションも引っ越して電話も繋がらないんだ。
実家に戻ってるか心配なら、行ってみるしかないじゃないか」
「心配?!由奈とは別れたんでしょ?」
「確かにあいつにはもう会わないと言ったけど、こんな状況になった今、それとこれとは別だ」
「一緒だよ!今さら何なのって話だよ!」
声を荒げた和虎
控え室の隅にいる俺達に
視線が集まる気配
再び声を落とし
ごめん、と呟いた和虎に
黙って首を振った。
和虎の言う通り
今さら由奈を心配する資格なんて
俺にはない
自分が何をしてきたか
わかってる
だけど
室内が再びざわめきに包まれるのを待って
俺は口を開いた。
「今回の件は、俺にも責任がある。
家にいればそれでいい‥‥でもいないなら、探したい」
「‥‥っ」
言葉を詰まらせた和虎
ぐしゃぐしゃと髪をかき回すと
大きく息を吐いた。
「‥‥由奈は俺が探すよ。
電話なら俺がかけるし、行くなら俺が行く」
「和虎」
「責任感じるのはわかるよ。でも、柊兄だけのせいじゃないし、柊兄は動くべきじゃない」
厳しい顔で
きっぱりと言い切られた。
「あの娘が契約を切られたことを柊兄に言わなかったのは、迷惑をかけたくなかったからだと思う。
今柊兄が動くと大ごとになりかねないし、由奈の為にもおとなしくしててよ」
「‥‥」
頷けずにいると
胸をノックするように
とん、と叩かれた。
「任せて。お願いだから」
「‥‥わかったよ」
やっと表情を和らげた和虎に
俺は
悪いけど頼む、と
頭を下げた。
「柊兄が動くのは反対だけどさ‥‥探したいって言ってくれて、正直嬉しかった。
心のどこかで、その言葉を期待してた自分がいたみたい」
和虎は
ほろ苦い顔で
微笑んだ。
「‥‥由奈を見捨てないでくれて、ありがとう」