テキストサイズ

禁断兄妹

第63章 聖戦



「はあっ‥‥はあっ‥‥」


アスファルトを蹴る自分の足音と
息遣いが

熱い頭に響く。


────非常に危険な状態です───何か兆候はありましたか───


兆候なんて


私の話は
お父さんを元気にしてるとばかり
思ってたのに


「はあっ‥‥はあっ‥‥」



───勿論行くよ。でも今すぐは無理なんだ───



一刻も早く知らせなきゃって
思ったのに

お仕事の邪魔を
しただけだった

スタッフの人に迷惑をかけ

柊を
好奇の目に晒しただけだった



「はあっ、はあっ‥‥‥っ!」



私は子供だ


何もわからない
何もできない


ただの

子供だ



「萌ちゃん!ストップ、ストップ!!」



遠くから
声が聞こえた。


ハッと目が覚めるような
感覚


足を止めた私を軽いステップで追い越し
目の前に立ったのは

闇に溶けるような
黒いスーツに黒いロングコート姿の

背の高い

一人の男性


「柊に頼まれてね。連れ戻せないなら、せめて病院まで送ってやってくれって」


ストーリーメニュー

TOPTOPへ