禁断兄妹
第63章 聖戦
───あいつ連れ戻してくれ!───
背中で聞いた
柊の慌てた声が
甦る。
「柊も和虎も、抜けられないんだ。許してやってよ」
そう言いながら
当たり前のように隣に並ぼうとするから
私は一歩離れた。
「あの、一人でも、大丈夫です‥‥」
「頼むから送らせてくれないか、僕が柊にどやされる」
快活に笑いながら
ポケットからハンカチを取り出し
どうぞ、と
私に差し出して
「あ、僕は元モデルであいつらの先輩。今はモデル事務所を経営してる。
仕事の関係であのイベントを見に来たら、さっきの場面に出くわしてね。柊に君のことを頼まれた。
‥‥まあ見ての通り、怪しい者じゃないから」
滑らかにそう言うと
名刺でも出そうか?と首を傾ける。
確かに元モデルと言うだけあって
身長が柊や和虎さんくらいあって
広い肩幅
立派な身なり
「というわけで送るよ。
聖××病院だろう?柊からちゃんと聞いてる。さあ、急ごう」
そうだ
早く行かなきゃ
お父さんが
「はい‥‥」
「よし、いい子だ」
柊の先輩は
鷹のような瞳を細め
にっこり微笑むと
綺麗に後ろへ撫で付けていた髪に
片手を入れて
無造作に崩した。