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禁断兄妹

第63章 聖戦



「一ノ瀬君!」


再びステージの袖に立ち
出るタイミングを待っていた俺のもとに
スタッフに連れられたプロデューサーが
小走りでやって来た。

幅広い人脈を持ち
様々なジャンルで活躍している若きプロデューサー

最初に挨拶をしただけだが
いかにも、な感じが
苦手だった。


「すみません、ご足労頂いて」


「いやいや、お父さん大変なんだって?
 いいよ、プレスがいいと言ったなら俺は全然いいから。

 今着てる衣装はもう出番?そっか、じゃあそれで最後にしなよ。演出のほうには俺から言っとく」


「あ、ありがとうございます!」


「家族は大事にしなね。
 ‥‥君ホント良かったよ。また一緒に面白いことしたいな。ヨロシクね」


差し出された右手

両手で握って
頭を下げた。


ひらひらと手を振り
演出家の名を呼びながらどこかへ行ってしまったプロデューサーを
見送りながら

俺は内心
驚いていた。


人の生死に関わることなら
了承はもらえるだろうと踏んでいたけど

迷惑そうな顔や
不満の声は
覚悟していた。


違った


そんなことを考えてるのは
俺だけだった


視線の先に現れた演出家

俺に向かって頷きながら
掲げた手でOKサインをするのが見えて

俺はまた深く
頭を下げた。

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