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禁断兄妹

第63章 聖戦


うつ伏せた私の目の前に
散乱している鞄の中身

あの手紙が
目の前にあった。


お父
さん


考えるより先に手が動いて

縛られている両手の中に
握りこもうとした瞬間

それは引きちぎられんばかりの力で

奪い取られた。


「!!」


「さっきも気にしてたな。何が書いてある」


しまった


「返して!」


体当たりしようと起こした身体
携帯を離した男の手に
正面から首を掴まれて


「うぐッ!!」


「座ってろ」


腕一本で
さっきと同じ姿勢に戻され

後頭部がシートに密着するほど
強く押しつけられる。


「やめ‥‥苦し‥‥」


男は片手で便箋を広げると
口を開いた。


「───謙太郎君。いや、昔のように謙と呼ばせてくれないか‥‥
 
 直接会って話をしたいと思っているが、もしそれが叶わなくなった時の為に、この手紙を書いておく───」


そこまで読み上げた声が
途切れて


「謙太郎‥‥」


眉根を寄せ
記憶を探るように低く呟いた
一瞬後

その細められた瞳が
はっと見開かれ

鋭く
光った。

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