
禁断兄妹
第63章 聖戦
「写真は後で全部あいつに送信してやる‥‥じっくり眺めた後は証拠写真にでも使えばいい。
臭い飯を食おうがいくら金を請求されようが、俺は構わない」
胸から離れた手が
ズボンのチャックをおろすのが見えて
男がこれからしようとしていることを
絶望と共に悟る。
目の前も
頭の中も
真っ白に霞んでいく私を
鳴り響いた携帯の着信音が
現実に引き戻した。
「やっと仕事が終わったってところか‥‥」
ディスプレイを見た男の
残忍な笑みから
柊からの着信だと
わかる。
しばらく鳴り続けた音は
途切れて
またすぐに
鳴り始めた。
───戻ってこい萌!ここからタクシーを使え!くそっ、あいつ連れ戻してくれ!───
最後に聞こえた柊の声が
甦る。
柊
心配してる
きっとすごく
心配してる
「悪いが手が離せない。これからハメ撮りなんでね」
冷笑を浮かべる男の手の中で
鳴り続ける携帯
止まっていたもう片方の手が
おろしたチャックの中から
何かを取り出すように
動きだす。
「や‥‥いや‥‥」
柊
私のことを
宝物のように愛してくれている柊
この
身の毛もよだつ出来事を知ったら
どれほど怒り狂い
どれほど傷つき
悲しむだろう
「や‥‥やだ‥‥っ、嫌ぁッ!!」
男に乗られている両足
死に物狂いで踏み鳴らしながら
上半身をねじり
シートの上に
倒れこんだ。
