禁断兄妹
第63章 聖戦
少女の足でも
多少は迷ったとしても
十五分も歩けばここに着く
駅員が見逃してるだけ
そう言ったのは自分だけど
こんな時間に駅にいるのは大人ばかり
それもあまり多くはない
女子中学生が一人でいたなら
目立つはず
「あの、すいません!女子中学生見ませんでした?
背は155センチ、髪はこれくらい長くて──」
駅の前や改札口にいた
待ち合わせをしているらしき人
数人に声をかけた。
誰も
萌を見ていなかった。
寄り道や迷子の可能性も
ゼロではないけど
それなら
電話に出るはずだ
───ヤバい奴が萌をつけてるんだ!!
駅に着く前に、どこかへ連れ込まれてるのかも知れねえ!!───
まさか
本当に
半信半疑だった頭が
悪い方へと傾き始める。
取り乱していた柊兄のことも心配だし
病院へ向かうより
もう一度萌を探しながら
クラブへの道を戻って柊兄と合流したほうがいい
俺の勘が
そう囁く。
お父さんが末期癌だとは聞いていたけど
危篤を知らせに来た萌が
こんなことになるなんて
「タイミングが最悪過ぎるだろ‥‥」
萌らしき少女を見たら連絡をくれと
駅員に携帯番号を託し
俺はぱらつく雨の中を
飛びだした。
寒い
雪に変わるかも
知れない