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禁断兄妹

第63章 聖戦



何枚もある便箋

男は私の首を掴んだまま
片手で器用にめくっては
信じられない速さで目を走らせる。


───一ノ瀬萌‥‥両親の再婚で兄妹になった、血の繋がっていない妹───


柊の弱みを探す為に
私達家族の身辺を調べたであろうこの男は
「ケンタロウ」が誰のことか
知っているんだ


「いつ父親からこれを託された?その時何と言っていた?」


でも何がそんなに

この男の興味を
引いているの───


「‥‥ウッ!!」


「質問に答えろ。潰すぞ」


容赦ない力で喉仏を押されて
激痛に目が眩む。


それでも答えずにいると
力は更に増して
満足に呼吸ができない。


苦しい


首を振っても
身体を揺すり
足踏みしても


苦しい


沸騰する頭と身体

破裂
しそう


「さ‥‥さっきっ‥‥もしこのまま喋れなくなった時は、ケンに渡してくれって‥‥っ」


「この手紙を読んだか」


「離し、て」


「読んだかと聞いている」


「読んで、ない‥‥っ」


「まだ誰も読んでいないか?一ノ瀬柊も?」


「そ、う‥‥」


必死に頷いた喉から
手が浮いて

私はやっと
水面に顔を出した。


「はあっ!はあっ、うウッ、ゲホッ、ゴホッ!!」


「こいつはケッサクだ‥‥フッ、ははは、あっはっは!!」


朦朧とする意識の中

あざ笑うような
高らかな笑い声が

遠くに聞こえる。


揺れる視界

手紙は
私の目の前で

男のスーツの内側に消えた。

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