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禁断兄妹

第63章 聖戦



「萌さん!!」


灰谷さんが

ボンネットの上に乗っている


フロントガラス越し

かがみこむようにして
私を見てる


「萌さん‥‥っ」


目が合った途端
鬼のような形相が

泣き出しそうに

歪んだ


「撒き切れなかったか‥‥頭は悪いが鼻の利く犬だ」


男は振り返りもせず

冷ややかに
舌打ちをした。


灰谷さん


病院からずっと
私に
ついて来ていたの


男は
最初から気づいていて

灰谷さんを振り切る為に

この駐車場まで
あんなに走ったの


「萌さんを離せ‥‥離せっ!!」


立ち上がった灰谷さんが
その場で
ジャンプを繰り返す


大きな身体が着地するたび

ドオン、と大きな音と共に

車が揺れる。


「壊されたくなかったら出てこい!!お前の手下はもうぶっ倒したぞ!!」


「通報されるとやっかいだ‥‥今黙らせてやる」


「‥‥ウッ!!」


何かが飛び散った


反射的に目を閉じた顔に
露わになっている肌に

熱くて
べとりとした何かが
かけられた


まさか


「あのままじゃしまえないんでね」


鼻で笑うような声

かけられたのは

きっと



「う、うあ、あ‥‥」



猛烈な吐き気がこみ上げて

再び嘔吐した私の上から
男は身体を翻し

外へと

飛び出していった。



遠ざかる意識の中
シートに倒れこんだ私の耳に

灰谷さんの怒声が
微かに聞こえた。


灰谷さん

気を付けて


その男は

普通じゃない


ナイフを持った

恐ろしい
悪魔

なの


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