
禁断兄妹
第64章 聖戦②
「とにかく警察へ電話します」
警察
パトカーの赤い光
サイレン
やって来るたくさんの警官
野次馬
私の身に起こったことが
みんなに
柊に
知られてしまう
灰谷さんは
携帯を取り出しながら
車を降りようとする。
やめて
気が遠くなるような恐怖に
喉が締まって
やめて
声が出なくて
携帯を操作し始めている腕に
飛びついた。
「萌さん‥‥?」
硬い筋肉の手触り
肌が粟立ち
胃が
痙攣するのがわかった。
必死に飲み込んで
携帯を持つ手を
思いきり握って
首を振った。
「大丈夫、私がついています。
あなたは病院へ行くだけです。プライバシーも守られます」
真摯な声と共に
私の手がやんわりと
でも抗えない力で
ほどかれそうになって
「誰にも言わないで‥‥!!」
残る力を振り絞って
声をあげた。
「知らない人についていった私が悪いの、それに灰谷さんが助けてくれたから、何もされてないっ」
「これが、何もされてないと言える状況ですか」
静かな声には
怒りが滲んでいた。
「それに、この車こそマンション周辺で目撃されていた不審な車なのかも知れません。
つまりあなたを狙った計画的な犯行の可能性があります‥‥警察へ届けるべきです」
「いいの、本当に、何もされてないからっ」
「気持ちはよくわかります。でも泣き寝入りしてはいけません」
「誰にも知られたくないの‥‥っ」
「勇気を出しましょう萌さん、力になりますから」
「こんなこと知ったら、みんなが傷つく‥‥っ!!」
夢中で
叫んだ。
大声と一緒に
涙が
こみ上げた。
「でも萌さん!」
「柊が傷つく‥‥っ!!」
掠れた声が裏返るほど
叫んだ。
口を開きかけていた灰谷さんが
はっとしたように
動きを止めた。
