
禁断兄妹
第64章 聖戦②
泣き崩れる私に
息を呑んだまま
固まっていた灰谷さん
でも
決断は早かった。
「わかりました。あなたの言う通りにします」
きっぱりとした声が
力強く響いて
顔を上げた私に
灰谷さんは黙ったまま
頷いた。
私を見つめる瞳は
暗い中にあっても
星のように光って
全てを悟っているように
見えた。
「さあもう泣かないで。
そうと決めたら早くここを離れましょう。この散らばっている物はあなたの物ですね?すぐに集めます」
喉の渇きと痛みは限界を超えていて
しゃくりあげながら
頷くことしかできない。
灰谷さんは
後部座席に散らばる私の荷物をかき集め
鞄に詰め込んでいく。
「そうだ‥‥この携帯、萌さんの物ではありませんか?」
ジーンズのポケットから
灰谷さんが取り出したのは
私の携帯だった。
「‥‥!!」
「外にいた手下が失神しても車のキーを離さなかったのであの男から奪ったんですが、その時一緒のポケットにこれが入っていて。
色も飾りも以前見たあなたの物に似てる気がしたので、念の為取り上げておいたんです」
そっと手渡された携帯
震える両手の中に
握った。
夢を
見てるよう
ありがとう灰谷さん
良かった
良かっ
た
これで
あの写真が消せる
おぞましい出来事の証拠は
なくなる
震えるほどの安堵感に
全身の力が抜けて
意識が
遠のきかけた。
「よし、行きましょう。ダウンしてるあいつらが、目を覚ましてしまう前に」
