
禁断兄妹
第64章 聖戦②
灰谷さんは
私の頭にフードをかぶせながら
「おんぶしますよ。触られるのは嫌だと思いますが、少しだけ我慢してください」
生真面目な声でそう言うと
力の入らない私の身体をその背に乗せた。
恐怖感や嫌悪感は
まだ消えなかったけれど
強い眠気にも似た脱力感が
意識を薄れさせて
私を鈍感にした。
開け放たれた車のドア
ふっと
冷えた空気が頬を撫でて
自分の身体が
高く舞い上がった感覚
ポツポツと
フードを叩いているのは
雨
「タクシーが拾えるところへ行きましょう。急ぎますからしっかりつかまっていてください」
小さな声に
ぼんやりと
頷いた。
早く
早く家に帰りたい
そしてお風呂に入って
全てを洗い流して
そして
そして───
「!!」
病院
雷に打たれた
気がした。
そうだ病院に
お父さん
手紙
手紙‥‥!!
待って
止まって
声の出ない喉
歩き始めた灰谷さんの両肩を
狂ったように叩いた。
「ど、どうしました?」
足を止め
振り返る横顔に
手紙
あの男から
手紙を取り返して
そう伝えたいのに
石のように乾いた喉は
もう何も
言葉にはしてくれない。
「どうしたんです?何かありましたか?」
手紙
手紙を取り返して
あの男にとられたの
スーツの内側にあるの
ぜいぜいと
掠れた息を吐きながら
大きく口を動かした。
「え?‥‥エアイ‥‥?なんですか?」
違う
手紙
