
禁断兄妹
第64章 聖戦②
「しゅ、柊兄見て!!ほら、そいつの横にある鞄って、もしかして学生鞄!!」
「何‥‥?!」
心を
奥深くに守った身体は
静寂に包まれたまま
スーツの内側に手を入れる男を
目に映す。
スローモーションの
絵の中
現れた
細く光る物
あれは何だろう
指の間に挟むように握り直しながら
気配を伺っているのは
正面にいる
私ではなくて
「‥‥灰谷‥‥てめえ‥‥っ!!」
怒りに震える声が
聞こえる方向
───あのクソガキのモデル人生を終わらせてやるのは簡単だ。右目?左目?朝飯前だ───
地面についていた男の片膝が
微かに
浮きあがる。
───世界中のランウェイを歩くんだ。GUCCIやDiorだって、今に歩いてみせるよ───
胸の奥
何かが叫んで
暴れて
感覚のなかった
両足と両手に
迸るように
熱い血が流れるのを
感じた。
「こ、これは、ですから、事情がっ」
「萌に‥‥俺の萌に何しやがった‥‥?!
許さねえ、絶対に許さねえ!!ぶっ殺してやる!!」
「それはこっちのセリフだクソガキ!!!」
血を吐くような怒声が
銀色の光と共に
闇を貫くより速く
私の身体は
弾かれたように
飛び出していた。
