テキストサイズ

禁断兄妹

第64章 聖戦②



隣でハンドルを握るハイタニは
眉間に深く皺を刻んで
無言のまま
まっすぐ前を見ている。


初めてまともに見たその顔は
武骨で
古風

肩よりも長いであろう髪を
後ろで束ねている様は
野武士を連想させた。


今気付いたけど
冬だというのにコートも着ずに
何故かセーター一枚

その身体は
服越しでも筋肉が隆々としていて

さっきの戦いぶりからしても
ボクシングか何か
格闘技系を体得しているんだろう

それは
耳が特有の状態に変形している事からも
見てとれた。



「ハイタニさん‥‥あんた一体何者?柊兄や萌と知り合いなの?」



「萌さんの住むマンションで、コンシェルジュのアルバイトをしています。本業は別ですが」



「コンシェルジュ?!本当?柊兄」



思わず柊兄を振り返ると
長い沈黙の後
ああ、と
小さな声が返ってきた。


ハイタニに向って
声を荒げ
牙を剝いていた柊兄

あの燃え盛るような勢いは
見る影もなかった。



「あのさ、ハイタニさん。
 さっきの、萌が大ごとになることを望んでないとかって、どういう意味」



「言葉の通りです。
 救急車を呼べば大ごとになりかねないので、友人の看護師に事情を話し、来てもらいました」
 


「大ごとにはしたくないと、萌が言ったのはいつだ?俺達が駆けつける前?」



「‥‥」



「いったい何があったんだ?どうしてあんなところに萌といた?どんな事情があったんだ?」



次々と
湧き上がる疑問

しかしハイタニは険しい表情のまま
返事をしない。



「悪いけどさ、状況的にあんたは不審者以外の何者でもないんだ。疑われてるんだよ。ちゃんと話してほしい」



「疑いたいなら、疑えばいい」



ハイタニの態度はあまりにも頑なで
怒りがこみ上げる。


でも
冷静にならなくては
いけない


ストーリーメニュー

TOPTOPへ