禁断兄妹
第64章 聖戦②
「じゃあ質問を変えよう。あんたが倒したあの男、あれは誰なんだ。
あいつが車の陰にいたことを、あんたは知っていたのか?」
「私には何もわかりません」
「本当か?
それにあの男の言葉も俺には謎なんだ。それはこっちのセリフだクソガキ、って聞こえた。どういう意味だと思う」
「わかりません」
「少しは考えろよ!
柊兄が、萌に何しやがった、許さねえ、ぶっ殺してやるってあんたに言っただろう?
それに対して男が言った言葉なんだよ。そしてナイフだか何だか知らないけど、柊兄に向って投げたんだ」
頭の中を整理するように
言葉を紡いでいると
固く絡まっていた糸が
弛むのを
感じた。
───萌に‥‥俺の萌に何しやがった‥‥?!許さねえ、絶対に許さねえ!!ぶっ殺してやる!!───
そうハイタニに叫んだ柊兄
それはこっちのセリフだと
横やりを入れた男
あの男は
柊兄の言葉の何に反応して
怒りを爆発させたのか
男の
激情が迸るような怒声を
思い出しながら
俺は
想像を巡らせた。
───お前こそ、俺の××××に何をしやがった───
ふっと
ひらめいた
想い
───許さねえ?ぶっ殺してやる?
それはこっちのセリフだクソガキ───
俺が
自分で想像した言葉なのに
まるであの男の思念を読み取ったかのように
ひどくリアルに感じられて
俺の心臓はドクンと
不安定に
波打った。
あの男が
『俺の萌』と言う訳がない
だとしたら?
俺の×××
女
だろうか
柊兄は
家を出て萌と離れていたこの半年ほどの間
荒れた生活を送っていて
スキャンダルが絶えなかった。
彼氏持ちの女性に手を出して
トラブルになったこともあったし
柊兄との密会が原因で
失墜した女子アナや若手女優もいた。
もし
あの男が
そんな女性の彼氏や関係者
だったとしたら