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禁断兄妹

第64章 聖戦②



明かりが落とされた
人気のない病院のロビー

柊兄は俺とハイタニから距離を取るように
その片隅へと歩いていきながら
携帯を取り出す。

俺は並んでいる沢山の椅子の一つに
腰を下ろした。


「一ノ瀬巽の家族の一ノ瀬柊です。父の容態が急変したと聞いたんですが‥‥」


どうか無事でいてほしい

響く声に耳を澄ましながら
固く両手を組んだ。


柊兄は落ち着きを取り戻しつつあるけど
まだ不安定で
危うい

萌がこんなことになっている今
お父さんにもし万が一のことがあれば

柊兄は
壊れてしまうだろう


お父さんのことを『あの人』と呼んだりして
冷めた態度を取りながらも
いつも気にかけて一目置いていたこと
俺は知ってる

お父さんが萌の実の父親だとわかった時
裏切られたと
あんなにも怒り傷ついたのは

萌への愛情だけじゃなくて

お父さんへの愛情と信頼も
深かったからだ


この前お見舞いに行った時に
謝って
謝られて
和解できたと
穏やかな表情で話してくれた柊兄


『小学校の運動会でリレーの選手だったことを今更誉められてもな』
なんて
優しい目で
苦笑いしてた


不器用な
父子


もっと一緒にいさせてあげたい


神様
頼むよ

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