禁断兄妹
第65章 聖戦③
祈るような気持ちで
萌との面会を待っていた俺の
携帯が鳴った。
美弥子だった。
「柊君‥‥っ」
涙声で
振り絞るように俺を呼び
「巽さん、が‥‥」
それきり
声を詰まらせる美弥子
震える息遣いだけが
聞こえる。
まさか
血の気が引いて
座っているのに足元が揺らいだ。
「‥‥どうした」
それだけ言うのが
やっとだった。
「巽さんが‥‥
つい、さっき‥‥亡くなっ、た、の‥‥っ」
そこまで必死に言葉を繋いだ美弥子が
堰を切ったように
泣き出した。
嘘
だろ
俺の手から携帯が落ちて
床に転がった。
美弥子の悲鳴のような泣き声が
遠く聞こえた。
父さん
辺りを見回し
気配を探した。
父さん
いつの間に
旅立った
そよとも
空気は震えなかった
ことりとも
物音は聞こえなかった
何も変わらない
何も
変わらないのに
あなたはもう
この世にいないのか
脈打つ心臓が
ドクンドクンと脳を揺らし
目眩を覚える。
『大丈夫、父さんは死なない。少なくとも、今じゃない』
俺が萌に言った言葉
自分の言葉に
すがっていた
死を覚悟しながらも
その時は今ではないと
信じていたのに