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禁断兄妹

第65章 聖戦③



「柊兄‥‥?」



隣に座っていた和虎が
不安げな顔で
拾い上げた携帯を俺に差し出す。



「‥‥死んだ‥‥」



「えっ」



「父さんが死んだ‥‥」



顔色を変える和虎

離れたところに座っていた灰谷も
俺の声が聞こえたのか
弾かれたように立ち上がった。


父さんが死んだ


父さん




「一ノ瀬さーんっ」



近づいてくる看護師の足音と声が

無に漂いかけた俺を

現実へ引き戻した。



「は、はい‥‥」



「妹さんね、病室へ移されましたよ。
 意識も戻られてますし、少しなら面会できますから、行きましょう」



こちらですよ、と
先に立って歩きだす後ろ姿

身体が

動かない



───ねえ、お父さんこのまま死んじゃったらどうしよう、私のせいで、私、が‥‥っ───



連絡のつかない俺に
父さんの危篤を知らせてくれた萌



───私が、いっぱい喋りかけたの、お父さん疲れてたのに、全然気がつかないで、ずっと‥‥!───



───このままお父さんが死んじゃったらどうしよう、どうしたらいいの?!───



容態が急変したのは自分のせいだと
大粒の涙をこぼしていた萌





お前に
なんて言えばいい

あまりにも
残酷な結末



「‥‥っ」



父さん


どうして

どうして今なんだ

どうして
俺と萌を待たずに逝った

父さん

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