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禁断兄妹

第67章 罪と罰②



「ごめん由奈、後で折り返す!」


早口の和虎君の声で
我に返った。


「えっ、ダメよこの携帯は───」


言い終える前に
通話は
切れてしまった。


無機質な音を
茫然と聞きながら


───そうか、そういうことか───


───柊兄は無事だ。柊兄はね───


頭の中に散らばる言葉の断片を
かき集める。


───萌があんな目にあったのを知っていたのに───


モエ


柊君が愛する
ただ一人の女性

あんな目って
いったい───


「失礼します、嬢」


後ろから伸びてきた手に
携帯が取り上げられて

振り返ると
携帯はツトムさんのスーツの内側へ
消えていった。


「ツトムさん‥‥っ」


「カシラは禁止してらっしゃいましたが、会長のご指示があるなら、お貸しします」


助けを求めようとおじいちゃんを見ると
電話の最中だった。


「───ああ、今この瞬間からでいいから、若造には今後一切手出しするな。組のもんにも誰にも勝手な真似はさせるな。
 いいな。

 それとな、今回の件でお前からケジメを取るつもりはねぇから、詰めるな。
 ‥‥ごちゃごちゃ言うな。わしが詰めろと言ったら詰めろ。詰めるなと言ったら詰めるな。

 で‥‥ちょっと待っとけ」


おじいちゃんが
私を見た。


「修斗だ。
 お前のお願い通り、わしが言うべきことは言った。お前も話すか?」


夢中で頷くと
携帯を放り投げられる。


修斗


耳に当てる手が
震えた。


「修斗‥‥私よ」


「はい」


いつも以上に
低く冷ややかな声


「修斗あんた、柊君に何かしたの」


「今の会長の指示は、やはりあなたのさしがねですか」


「質問に答えて」


「一ノ瀬柊には指一本触れていません」

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