禁断兄妹
第68章 罪と罰③~灰谷の告白~
「萌さんが襲われたという事実だけでも、あなたの怒りと悲しみは計り知れないけれど、もし自分への恨みが犯行の動機だったとわかれば‥‥あなたはどれほどショックを受けるか。
犯人への怒りもさることながら、自分を責め、苦しみ、心に深い傷を負うことになりませんか。
投げられたナイフからあなたを守ったこともそうです。
一ノ瀬さんに恨みを持っていると聞かされていたからこそ、男が狙っているのは一ノ瀬さんだと判断できたのではないでしょうか。
だからナイフより先に、飛び出した。あなただけを目がけて、真っ直ぐに。
そうでなければ絶対に間に合わない。
萌さんはあなたの身代わりとして、本当に辛く、恐ろしい目に遭った。
しかしそれでも、最後まで、あなたの心と身体を、守ろうとした。
これが愛でなければ、何なのでしょう。
一ノ瀬さん。
あなたは萌さんから、これ以上ないほど、愛されているのですね‥‥
‥‥うん。うん。
ああ‥‥初めて認めてくれましたね。
うん。
わかっています。
どうしようもないほど、萌さんを愛しているんですよね。
それは萌さんも同じなんですよね。
そして私も、今はその事実を、受け入れることができます。
あなたと萌さんは愛し合っている。
それでいいんだと、思います。
もしかしたら私は、あなたの口からその正直な言葉を聞くのを、ずっと待っていたのかも、知れません‥‥」
───第68章 罪と罰③~灰谷の告白~ END───