禁断兄妹
第68章 罪と罰③~灰谷の告白~
「一ノ瀬さん。
もう少しだけ話をしても、いいですか。
私は昨日、病院で萌さんと色々会話をする中で、萌さんがあなたに恋愛感情を持っていることに、気がつきました。
はっきりと聞いた訳ではなく、言葉の端々や表情などからそう感じたんです。
咎めたり諭したりする気はもうありませんでしたが、純粋な萌さんは一ノ瀬さんに影響され、気持ちが引きずられているのでは、という思いが、その時の私にはまだあったんです。
それに恋愛感情と言っても、恋に恋する年頃の、微熱のようなものだろう、と。
でも今回の事件で、私ははっきりと理解しました。
萌さんは自らの意思で、一ノ瀬さんを愛しているのだと。
勇気と覚悟を持って、真剣に愛しているのだと。
そしてね、私は今、こうも思うのですよ。
もしかしたら萌さんはあの男から、一ノ瀬さんへの恨みを、聞かされたのではないか、と。
一ノ瀬さんへの復讐の為に自分が狙われたのだと、萌さんは知ってしまったのではないでしょうか。
だからこそあの時、『柊が傷つく』と、言ったのではないでしょうか」