禁断兄妹
第72章 君が方舟を降りるなら②
ふわっと
誰かに呼ばれたような感覚に目を開けた。
「‥‥」
私は
自分の部屋のベッドの中にいて
勉強机の椅子に
お母さんが座っていた。
私の目が覚めたことに気づくと
頭は痛くないか、気分は悪くないか
優しい声で聞いてくれて
みんなはもう帰ったと
教えてくれた。
机の上の時計は
夜の六時。
「ごめんなさい‥‥せっかく楽しい雰囲気だったのに」
意識が薄れて
テーブルに突っ伏していきながら
みんなの悲鳴みたいな声
テーブルの上のお皿やカップが床に落ちる音
萌
お兄ちゃんが駆け寄ってくる
残像
「たかみちゃんとタカシ君の話を萌はすごく集中して聞いていたし、一生懸命メモを取ってたじゃない?ちょっと疲れが出ちゃったんだと思うわ」
お母さんは
頭を使いすぎてプシューって湯気が出た感じね、と
変な身ぶり手ぶりをするから
笑ってしまった。
「たかみちゃんもタカシ君も、本当に素敵な子ね。
学校で二人が萌のそばにいてくれたら安心だな、心強いなって、今日三人を見てて思ったわ」
「うん」
私も今日改めて
二人の存在に心から感謝した。
そして
「お母さん‥‥」
「なあに?」
「私を生んでくれて、ありがとう‥‥」
お母さんにも
心から感謝したい
だってお母さんがいなかったら
そもそも私はここにいないもの
「お母さんが私のお母さんで、本当に良かったなって、思ってる」
私の存在自体が喜びだって言ってくれたこと
嬉しかったのすごく
「萌ったら‥‥急に、もー‥‥泣けてくるじゃない」
お母さんは泣き笑いの表情でそう言うと
えいっ、と私のベッドにもぐりこんで
ぎゅっと抱きしめてくれた。
暖かい
「あのね萌‥‥『私達家族についてのとっても大事な話』ってね‥‥私と巽さんの恋のお話でもあるの」
「恋のお話?」
「うん。私はそんな風に思ってる‥‥」
幸せなため息をつくような声
「この恋の為に傷つけた人もいるわ。色んなことがあった。
萌の体調が落ち着いたらちゃんと話すから、ぜひ聞いて欲しい。
私と巽さんの恋のお話‥‥」
「うん。聞かせて欲しい」