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禁断兄妹

第72章 君が方舟を降りるなら②



「そういうことだったんですね‥‥」


タカシ先輩が呆然と呟く。


「そうだね。
 俺も君達と一緒で、叶えたい夢があるんだ。今どんなに萌が心配でも、俺は行くよ。ずっとそばには、いてやれない。

 だからさっき言った俺の言葉を、どうか忘れないで欲しい」


「はい‥‥わかりました」


お兄ちゃん

すごいね
おめでとう

でも言葉にはならない

想いは
目から零れ落ちていく。


「俺は萌を信じてるから。

 お互い頑張ろう‥‥?」


優しく暖かな声

でも
握り締めた指先は
冷たくなっていく。


お兄ちゃん

お父さんもいない
私の記憶も戻らない

それでも
行ってしまうの

私とお母さんを
残して


「‥‥で‥‥」


「えっ?」


行かないで


歯を食いしばって
嗚咽と一緒に
飲み込んだ。


お兄ちゃん

近づけないくせに
離れて欲しくない

わがままだってわかってる
けど


行かないで


ずっとそばに
いて

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