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禁断兄妹

第72章 君が方舟を降りるなら②



夕御飯はホットプレートで作るパエリアと
新鮮なサラダ
スープも

私とタカシ先輩も手伝って
テーブルにはあっという間に賑やかなお料理が並んだ。

お手伝いをしてる時も
いただきます、をしてからも

私は
さっきのお兄ちゃんの言葉や眼差し

あの指先から放たれた熱に
囚われたままで

あんなに夢中だった個人レッスンの話にも
上の空


「───萌が帰って来た時に少し話をしたんだけど、今日は萌と母さんに伝えたいことがあってね」


個人レッスンについてのお母さんとタカシ先輩の会話が落ち着いた頃
お兄ちゃんが口を開いた。

そうだった


───とても誇らしくて、とても寂しい話かな───


どんな話だろう

漂っていた心が引き締まる。


「去年から、世界中で仕事をしたいと思っていて、事務所とも相談しながら色々動いていたんだけど、思いがけず話が早く、大きく進んでね。今後はニューヨークを拠点にして活動することにしたんだ。
 まずは来月、顔合わせや色々な手続きの為にしばらく行ってくるよ」


事務所がニューヨークに拠点を移すことを強く勧めてくれていて
今が最大のチャンス
スポンサーやショーのスケジュールも決まってきている

まずはビザなしでできることを
春にはビザを取って
いずれは
永住も視野に


「世界中のランウェイを歩くんだ。
 GUCCIやDiorだって、今に歩いてみせるよ‥‥」


いつからか目に映っていたお兄ちゃんの顔が
切なく歪んだ。


「萌、泣いてるのか‥‥?」


頬を拭うと
濡れていて

言葉にならなくて


「柊、素晴らしい話ね!おめでとう!おめでとうだけど、萌と同じよ‥‥なんだか、寂しくて‥‥」


お母さんも涙声になって
黙ってしまった。

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