禁断兄妹
第74章 君が方舟を降りるなら④
和虎にニューヨーク行きを伝えた翌日
萌と美弥子
図らずも我が家にやって来たタカシに
同じ内容を伝えた。
萌は無言のまま涙を流し
大きなショックを受けている様子だったが
寂しいという言葉も
応援するという言葉も
聞くことはできなかった。
───萌は柊兄のことすごく意識してるんだ。でも男性恐怖症みたいな感覚もあるし、どう接していいかわからなくて、つい避けちゃうんだよ。
まだ記憶が戻ってないんだから仕方ないよね。混乱してるんだよ───
和虎の言葉を
心の中で繰り返して
わかってる
焦るな
何度も自分に
言い聞かせた。
萌とタカシには
一緒に登下校することを減らし
万が一付き合いたくなっても
萌の記憶が戻ってからにしろと釘を刺したが
どこまで効力があるかはわからない。
俺は萌の記憶が戻ることを
それこそ喉から手が出るような思いで
今日か明日かと待ち望んでいたが
その渇望を嘲笑うかのように
何も変わらず日々は過ぎ
ぎくしゃくと俺を避ける萌の態度も
変わらないまま
そしてついに
俺のニューヨーク行きの日がやって来た。