禁断兄妹
第74章 君が方舟を降りるなら④
「今日も、本当はつけてたの。でもタカシ先輩がプレゼントをくれたから、外して、ポケットに入れたの。でも、空港に来る時に、もう一度つけることができなかった。素直に、なれなかった‥‥っ」
目の前で揺れる透明な光
あの日の
まま
「去年、初めて夜のお祭りに連れて行ってくれたよね。その時にお兄ちゃんに言ったこと、今も変わらないよ。
お兄ちゃんは私の理想の人。それは、ずっと変わらないよ」
萌は大きく深呼吸をするように
涙で乱れる息を
整えて
「私は、いつも、いつも、お兄ちゃんのこと、心から応援してる」
涙に濡れる赤い瞳が
綺麗な三日月に細められて
「いってらっしゃい‥‥」
萌が
両手を広げた。
互いの手を伸ばしても
届かない距離を保ったまま
大きく両手を広げた。
俺も
ひざまずいたまま
大きく両手を広げた。
「‥‥いってきます」
心で
萌を抱き締めた。
微笑んだまま
柔らかに瞼を閉じた萌
腕の中
ぬくもりさえ感じる。
波の音が
聞こえる。
想いは
届いていた
確かに
届いていた
───第74章 君が方舟を降りるなら④ END───