禁断兄妹
第76章 エム・オー・イー
「和虎さん、こんばんは。
今、お電話大丈夫ですか?」
一月三日
正月気分で大賑わいのママの店にいた俺に
萌からの電話。
「大丈夫よ。
この前は年越しパーティー楽しかったね。ありがとうね。
それにしても、どしたのよ。なんだかモジモジした声ね」
「実は、あの‥‥」
「んー?どしたのよ」
言い淀んでいる萌
何かあったんだろうか。
「お兄ちゃんには、内緒にして欲しいことなんです」
「おや。いいけど」
「絶対、絶対ですよ」
「大丈夫よ言わないわ。
ていうかさ、アタシは柊兄と親友だけど、萌とも親友だからね。言うなと言われたら言わないわよ」
「すみません、和虎さんを信用していないとかではないんですが‥‥」
昨日ニューヨークへ戻った柊兄
年越しパーティーでの二人はいつもの仲良し状態だったけど
あの後何かあったんだろうか。
「もし電話で話しづらいなら、ママのお店に来たら。今いるから」
萌が二十歳の誕生日を過ぎてから
ずっと来たがっていたママのお店に連れて来て
それ以来萌はこの店に何度か来たことがある。
萌はほっとした声で
じゃあ今から伺わせてください、と
すぐにやって来た。
「まー萌ちゃん、あけおめ!ようこそようこそ!」
「あけましておめでとうございます。お邪魔します」
「ささ、一番奥、虎ちゃんの隣を空けておいたからね。座りなさい」
店内は満員のお客さんでわいわいがやがや
騒がしくてちょうどいい
俺と萌はカウンターの端で乾杯。
萌はウーロン茶。
俺はジントニック。
「で?どしたのよ」
俺は内心
柊兄との関係に何か進展があったのかと
あれこれ聞き出したい気持ちでいっぱい
でも今夜は聞き役に努めるつもりだ。
「実は、お兄ちゃんのペンダントについてのことなんですが‥‥」
萌はぽつりぽつりと
年越しパーティーの後に起こった出来事について
話し始めた。