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禁断兄妹

第76章 エム・オー・イー



萌は
柊兄がシャワーを浴びている間
タオルを置く為に入ったユーティリティでペンダントを見つけ
勝手に開け
中を見てしまった。

中には大小二つのリングが入っていて
MOEと
自分の名前が彫られているのが見えた。

見えた瞬間
バスルームから出てきた柊兄に何をしているのかと聞かれ
何も見ていないと言って
逃げ出した───


「二つのリングから連想するのは、結婚指輪です。
 内側に二人の名前とかを彫るんですよね?つまり一つは私の指輪ということになりますよね」


萌の予想は当たっている。
それは七年前のクリスマスに
柊兄が萌へ贈る為に用意したもので
内側に『SHU♰MOE』と刻印してあることも
俺は知っている。


「びっくりしました。頭が真っ白になって、意味がわからなくて。
 お兄ちゃんは、ペンダントに入っているのは永遠の愛だと言っていましたよね」


萌は両手で頬を包み
大きく息を吐く。


「将来私が結婚する時の為に、今から用意してくれているのかもって、思ったりもしました。でも、妹の結婚指輪を兄が用意してるなんて、あり得ないと思うんです。でも、お兄ちゃんには、どうしても聞けなくて‥‥」


すがるような瞳で俺を見る萌


「和虎さん。あのリングのことについて、何か知っていませんか?」


萌の混乱と動揺は手に取るようにわかる。
だけどそれは
恋に悩む少女の胸の内のような
甘く心地よいものに感じた。


「うふふ、可愛いーっ」


思わずそう言うと
私は真剣に聞いてるんですよ、と泣きそうな顔をする。


「ごめん、悪かったわ。
 なるほどねぇ‥‥とりあえず結論から言うと、私も知らないわ」


知っているとは口が裂けても言えない。
萌に対して余計なことを言ったりやったりすることを
柊兄から固く禁じられている。


「ペンダントの中には何が入ってるのか、この前の翼のように聞いたことがあるけど、同じ答えが返ってきた。永遠の愛が入ってるってことしか、私も知らなかったわ」


柊兄は萌の心の雪解けを辛抱強く待っている
あれから七年も

気が遠くなるようなその歳月を
俺がここで台無しにする訳にはいかない。

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