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禁断兄妹

第76章 エム・オー・イー



ちょうど仕込みが終わったところだと
ヒロはすぐに電話に出てくれた。

感傷に浸っている場合じゃない
今はやるべきことがある。


「なあ、俺はいつもふざけたことしか言わないけど、今から俺が言うことを、真面目に聞いてくれるか」


無意識に
いつものオネエ言葉は出なかった。


「わかった」


真剣な空気を感じたんだろう
何故と聞かないのが
面倒な会話がなくてありがたい。


「いいか、いくぞ。

 『メカイ』でも『テカニ』でもない。『手紙』だ」


ゆっくりと
はっきりと
俺は要の言葉をそっくりそのまま口にした。


「どうだ、何か思い出し───」


「手紙‥‥!!」


ヒロが雷に打たれたように叫んだ。


「うわっ!!」


その大声が俺の鼓膜を直撃して
携帯を落としそうになる。


「そうだ、手紙だ!!手紙だったんだ!!どうしてわからなかったんだろう!!何がテカニだ、俺の馬鹿野郎!!」


バーン!と何かを叩きつける音。


「お、おいヒロ?!」


「あの時萌さんは手紙と言っていたんだ!!俺に取り戻してもらいたかったんだ!!なのに俺はわからなくて‥‥っ!!ああ萌さん、許してくれ、俺が馬鹿だった!!」


ヒロは頭に血が上っているのか
一人で意味不明な言葉を口走る。


「落ち着けよ、どういう意味だ?!」


「和虎、手紙だと今になってどうしてわかった?!あの時お前は言ってたじゃないか、日本語なのか、意味不明だと!!」


「いつの話だ?覚えてない」


「七年前、萌さんが暴力団組員に襲われた時のことだ!!」


「萌が襲われた時の?!」


ざわり
鳥肌がたった。


「きっと、あの男に何か大事な手紙を奪われたんだ!!萌さんはそれを俺に必死に訴えていたんだ!!
 ああ許してくれ萌さん、あの時俺がすぐにわかっていたら、何かが変わっていたかも‥‥!!」


俺も興奮していたがヒロの激昂は尋常じゃなく
会話がかみ合わない。

とてつもなく重大な鍵を手に入れた予感
それは本物だった。


「落ち着けヒロ。とりあえず今からそっちに行くから、この件について話そう」


俺は店を飛び出すとタクシーを拾い
ヒロの店へと急いだ。

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