禁断兄妹
第78章 恐れずに進め
私は灰谷さんのお店が落ち着いていそうな時間帯に電話をして
七年前に名刺をくれたクリニックへ予約を入れ
記憶を取り戻す為に催眠療法を受けることにしたと伝え
良い先生を紹介してくれたお礼を言った。
どうしてこの名刺をくれたのかは聞かなかった。
それは記憶が戻れば
自然にわかること
灰谷さんも同じ気持ちのようで
とても驚きながらも
あれこれ言ったり聞いたりすることはなく
ただ深く感動している声で
そうですか、そうですか、と繰り返した。
「あいつの催眠療法は高い効果があると評判が良いようです。安心して受けてください。
私からはこのことを誰にも言いませんが、もし何かあれば、いつでも連絡をください」
「ありがとうございます。記憶をちゃんと取り戻せたら、その時はみんなに伝えたいと思っています」
「萌さんの勇気の火が守られるように祈っていますよ。
過去のどんな出来事も、愛の前では幸いに変わりますからね。愛の力を信じてくださいね」
灰谷さんらしい
大きな愛に満ちた言葉
そこには喜びも確かにある、という
お兄ちゃんの言葉に通じるものを感じた。
予約の日は三日後
その日は
私のもう一つの誕生日になるのかも
知れない