
禁断兄妹
第81章 つがいの鳥③
「心配してくれるのは嬉しいけど、私は帰るわ。
おじいちゃんも修斗も、私のことを心配してくれてるのは良くわかってる。ありがとう」
「嬢、もう少し冷静に考えたほうがいい」
修斗の声に
苛立たし気な熱が混じる。
「子供ができないのは本当に家族計画によるものですか?あなたか臨一朗のどちらかに原因があるのでは?生まれるまで神楽の親族からのプレッシャーは続きます。
その上臨一朗の異常な執着のせいで、まるで囚人のような生活だ。これ以上あなたの命が削られていくのは───」
「臨一朗が私を待ってるの」
続けようとした言葉を飲み込んだ修斗
瞳の奥に
火花が散った。
「私がいなくなったら、彼はひとりぼっちだわ。彼には私しかいないの。私を信じて待ってるの。
だから私は帰るし、これからも彼と暮らすわ」
「嬢。あなたは臨一朗からの異常な執着を愛と勘違いしている。そして臨一朗に対する同情や憐れみを愛と勘違いしている」
「勘違いでもいいわ。臨一朗をひとりぼっちにはさせたくないの。どちらかが死ぬまで、ずっと一緒にいるわ」
「そういう発想が魂を食われてる証拠だ。臨一朗と傷を舐め合い、依存し合い、一人では立てなくなっている。早く離れなくてはいけない」
「随分熱心に離婚を勧めるのね‥‥」
これほどとは思わなかった
臨一朗が恐れるのも
無理はない
「あなたが神楽臨一朗と結婚せざるを得なかった原因は、俺にもある」
「ねえ、修斗は私に借りを返したいとか、償いをしたいとか思ってるの?だからそんなに熱心に離婚を勧めるの?」
修斗は答えずに
燃えるような瞳を細めた。
「あのね、修斗。私はもうあの頃のことを忘れてるわ。
ああすれば良かったとか、こうすれば良かったとか、何も思わない。誰のことも恨んでないし、後悔もしていない。ただ懐かしく思うだけ」
「‥‥」
「だから修斗も、もう忘れたらいいわ。私のことは放っておいてよ」
「どうして忘れられる‥‥忘れられたらどんなにいいか‥‥」
吐き捨てるようにそう言うと
修斗は足元に視線を落とした。
「もうこの話はやめましょう。時間の無駄だわ。
さっきも言ったけど、私は修斗に話したいことがあるのよ。
‥‥七年前、柊君の妹さんに修斗が怪我をさせたことがあったでしょう?」
