禁断兄妹
第81章 つがいの鳥③
ぎらりと光る視線が
再び私に向けられた。
「修斗がしたこと、確かに当時はすごくショックだったわ。打ちのめされたって感じ。
でもね、私は今更それを蒸し返してあんたを責めたり非難したりしようと思ってる訳じゃなの。よく聞いて欲しい」
黙って私を見つめる修斗を
真っ直ぐに見つめ返して
「妹さんを襲った時に、彼女から手紙を奪ったでしょう?」
修斗の瞳が
ふっと瞬いた。
「その手紙は柊君と妹さんにとって、とても大切なものだったらしいの。
私は最近、柊君と私の共通の友人から、その手紙を取り返して欲しいと頼まれたのよ。
修斗が今もまだ持っているなら、返してあげてくれないかしら」
「まさか、その為に、七年ぶりにここへ‥‥?」
「そうよ」
取り繕っても仕方がない
「なるほど‥‥やっと合点がいった」
修斗は失笑に肩を揺らした。
「神楽臨一朗があなたを簡単に霧島へ寄越す訳がないのに、随分無理を通して来たなと思っていましたが‥‥なるほど、一ノ瀬柊の為だったんですね」
皮肉めいた言い方
どこか憐れむように
「今も柊君が好きだとか、未練だとか、そういう気持ちは一切ないわ。
ただ、自分にできる最後の罪滅ぼしを、したいだけなの」
「罪滅ぼし、ですか。
しかしどうして今更そんなことを?そんなに大事なものなら、彼らはすぐに返せと言ってきたはずでしょう」
「そうね。どうしてその当時に言ってこなかったのかは、私も知らないの。
その手紙はこの上もなく大切なもので、今だからこそどうしても必要なものだから取り返して欲しいと、頼まれただけだから」
「友人はどうやって嬢に頼んできましたか?嬢と接触する経路などないはずだ」
私の行動確認をさせている修斗
疑問に思うのも当然だろう
「神楽の人間の目を盗んで、直接私に伝えに来たのよ。かなり無茶な方法だったけど、偶然も味方してくれてね」
「ほう‥‥」
感心してるのか
呆れてるのか
「手紙を取り返したくても修斗に接触する経路がないから、私に頼んできたようね。あんな無茶をするくらいだから、とても大事な手紙なんだと思う。
ねえ、あれからもう七年も経ったのよ。今もまだ持っているなら、返してあげて欲しいわ」