禁断兄妹
第81章 つがいの鳥③
真剣な声と眼差し
私も真剣に
向き合った。
「臨一朗は私を手放したくないばかりにとても束縛をするけど、暴力を振るわれたことは一度もないわ。
愛という言葉がぴったりかはわからないけれど、私達は二人で一人みたいな感じなの‥‥」
「嬢は、幸せなんですか」
幸せ
───幸せか、なんて一度も聞かれたことがないわ───
あの時臨一朗は
何も答えなかった
答えられなかったんだと
思う
幸せじゃない、と言われても
臨一朗には
どうすることもできないから
「私ね、思うのよ。
幸せか、幸せじゃないか、どちらかしかない訳じゃないのよ。
幸せな時もあれば、そうじゃない時もある。
臨一朗といるとね、確かにあるわ。幸せな時が」
一緒にお風呂に入る時
一緒にワルツを踊る時
荒れ果てた砂漠にも
一粒の金色が煌めく瞬間が
確かにある
「幸せな瞬間は確かにあるの。これが私の答えよ」
「嬢‥‥」
「それとね。私よく思い出すの。あの小さなワンルームのマンションで、修斗と二人でラグの上に座って、小さな丸テーブルを挟んでご飯を食べてた時のこと‥‥
二人分のお皿が置ききれないような小さいテーブルよ。おかずはスーパーで買ってきた魚を焼いたり、常備菜になるような煮物や炒め物。すごく質素だった。お皿だって100均で買ったりしたバラバラのものよ。
それでもね、今思うととても幸せな時間だったわ。お金がなくて夢しかなかったけれど、幸せだったわ。今ならわかるの‥‥」
修斗は横顔を見せたままで
頑なに私のほうを見ようとしない
それでも
ちゃんと聞いている
遠くを見るような瞳
あの頃を見てる
それがわかる
「今も昔も、私は幸せよ。
じゃあね‥‥さよなら‥‥」