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禁断兄妹

第82章 つがいの鳥④



「決心がにぶるといけないと思って、呼んでおいて良かった」


「リン君‥‥っ」


「さよなら由奈ちゃん‥‥」


ぎゅっと抱き締められて
首筋に
臨一朗の濡れた頬
嗚咽を押し殺した
熱い吐息


「本当にありがとう。本当にごめんね。元気でね‥‥」


消え入りそうな涙声
小さな動物のように
震えて


私はバッグを床に落とし
両手を臨一朗の背中に回して
強く
抱き締めた。


「リン君、愛してる。
 私は私なりに、あなたを愛してた‥‥」


「うん‥‥っ」


「七年間ありがとう。幸せだったわ‥‥本当よ‥‥」


「うん、うっ、う‥‥っ」


二人抱き合いながら
子供のように声をあげて
泣いた。


この冷たい籠の中で
七年間

臨一朗は臨一朗なりに私を愛した

私は私なりに臨一朗を愛した

どんなに異常だったとしても
どんなにいびつだったとしても

私達だけの

愛の形があった


「由奈ちゃん‥‥」


臨一朗がしゃくりあげながら
腕の力を緩めて
額をつけるように
私の顔を覗き込んだ。

子供みたいな
ぐちゃぐちゃの泣き顔
きっと私も
マスカラもファンデーションも
ぐちゃぐちゃ


「最後にキスしても、いい‥‥?」


「うん‥‥」


私達は
初めてキスをした。

震える唇を合わせるだけのキスは
手と手を合わせた祈りのように

純粋で
透明だった。


さようなら
臨一朗

さようなら
リン

私はあなたを残して
籠を出る

さようなら

愛すべき
私のおさなご

さようなら

私の
半身

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