禁断兄妹
第82章 つがいの鳥④
「これは通信機能があってね、置かれた場所の会話を聞くことができるんだ。発見器にもまず引っかからない。
由奈ちゃんがどんなこと話すのかなあって、最後に知りたかったから、持って行ってもらったんだよ」
黙っててごめんね、聞いた内容は誰にも言わないからね、と
臨一朗は屈託のない笑顔を見せる。
「そうだったの‥‥」
霧島へいった理由も
おじいちゃんや修斗の思惑も筒抜け
唖然としながらも
今となってはもうどうでもいい
逆におかしくなって私も笑った。
「こんなことをするリンの異常な愛に、よく七年も付き合ってくれたね。ありがとう由奈ちゃん」
臨一朗は泣き笑いの表情で
微笑んで
「神楽が私の家だって言ってくれたよね。臨一朗をひとりぼっちにはさせたくない、どちらかが死ぬまでずっと一緒にいるって言ってくれたよね。それを聞いた時、本当にすごくすごく嬉しかった。
橘修斗が何をどう言っても、神楽に帰ることを貫いてくれたよね。聞いてて苦しくて涙が出た。
今までも由奈ちゃんが大好きだったけど、霧島での由奈ちゃんの言葉を聞いて、もっともっと好きになった。だから離婚するのはやめちゃおうかと思った」
潤んでいく臨一朗の瞳は
良く見ると
既に泣いたように
赤かった。
「やめればいいわ。あれは本心よ」
神楽に戻らなければ
臨一朗が何をしでかすかわからない
そんな思いもあったけれど
何より
臨一朗を裏切りたくなかった
この人を
一人にできないと
思った
「でもやっぱりさ、二人で一人じゃ、やっぱりダメだよ。ダメなんだよ‥‥っ」
臨一朗は振り絞るようにそう言うと
ぎゅっと押し付けるように私にバッグを持たせ
窓の外を見た。
僅かに残る夕日に
臨一朗の涙が光った。
「タクシーが来てる。もうお別れだ」